気を遣わなくていいから楽だと思いつつも、どこか少し寂しく感じているのは、広すぎる家にひとりでいる時間を持て余しているせいかもしれない。
(疲れた……。昨日も泊まったばっかりだけど、今日も実家に顔出そうかな)
この数日間、重役たちにコラボ企画の進捗を報告するため、真山と愛梨は何度も役員会議室に足を運んでいた。
テーマが決まり、具体的なコンセプトや商品構成、さらには価格帯や販路を詰めていく段階なのだが、カタセではすべてにおいて彼らの承認が必要となる。
現場の話を聞かずに意見を押し付けてきたかと思えば意思決定には慎重で、スピード感についていけずにソルシエール側から何度も苦言を呈されているのだ。
せめてチームリーダーである真山には最低限の決定権を持たせてほしいと再三頼んでいるのに、それすらいい顔をされない。
『過去に決裁ラインを下げた前例はない』
『誰が責任を取ると思っているんだ』
『あちらの言いなりになってはいかん。うちの方が社の歴史は古いんだ』
そんな苦言ばかり呈する保守派の重役たちを諌めてくれたのが父だった。



