なかば脅しのような提案で決まった結婚だけど、そこまで酷いものになるとは思えない。それは、こうしたやり取りを楽しいと感じているからかもしれない。
愛で結ばれた普通の夫婦にはなれなくとも、意外とうまくやっていけそうな気がする。
「改めて、今日からよろしくお願いします」
「あぁ。よろしく」
そうして始まった同居生活だったが、拍子抜けするほどあっさりと日々が過ぎていく。というのも、想像以上に理人と顔を合わせることが少ないのだ。
これまで愛梨は毎朝弟を保育園に送り届け、その足で出社するというルーティーンを送っていたため、かなり早い時間に出社していた。それもあって定時で退社できていたのだ。
家を出て以降は朝陽の送迎を父が担うようになり、以前のように早い時間に家を出る必要はなくなったが、その名残で朝早くに目が覚めるため、結局現在も以前と同じ時間に出社している。
愛梨が家を出る頃に起床する理人とは朝の時間が合わない。反対に理人の帰宅時間は夜遅く、夕食は別々の上、愛梨は個室を与えてもらっている。寝室も別となれば、その日一度も顔を見ないという日さえあるくらいだ。



