こめかみを押さえた彼に心底呆れたような顔をされたが、そのあたりは過去の素行の悪さを見つめ直してほしいところだ。
「誤解のないように言っておくが、両親以外でこのマンションに来たことがあるのは君だけだ」
「えっ、そうなんですか?」
「秘書がエントランスまで迎えに来ることはあるが、部屋に入ったことはない」
「へぇ」
愛梨は意外な事実に相槌を打ちながら、理人が運んでくれたキャリーケースを受け取り、クローゼット前に置いた。
「へぇって……本当にわかってるのか」
「わかってますよ」
(女性と会う時はホテルだったってことよね。他人に自分のテリトリーに入られるのは嫌いなのかも。うっかり踏み込みすぎないように気をつけなきゃ)
それからふたりでリビングに戻ると、今度の同居生活の決まりを話し合う。
結婚の条件にしていた通り、家事は基本的にハウスキーパーが入るため全てお任せし、夕食は別々。家にいる時は干渉し合わず、外では仲のいい夫婦として振る舞う。決まりと言ってもその程度だ。



