いくら会場のホールから出たとはいえ、一流ホテルの化粧室前でとんでもない話題を出す新山にぎょっとする。
そんな愛梨の反応をどう受け取ったのか、彼女は嬉しそうに口の端を上げた。
「ふふ、そんなわけないよね。だって愛されてないんだもん。残念ね、彼との情熱的な夜を知らないままなんて」
暗に〝私は彼との情熱的な夜を知っている〟というマウントなのだろう。
(いい加減にしてほしい。人の好みに口出すのは野暮だけど、理人さんの女性の趣味を疑うわ……)
仕事に私情を持ち込んだり、こうした場で品のない話題を出したり、愛梨には非常識だと感じる言動だが、理人には天真爛漫だとでも映るのだろうか。
けれど、だからこそ自分が対外的な妻として選ばれたのだろうと納得もできた。
「目障りだから、さっさと消えて。なにがコラボ企画よ。ただ理人さんの会社に寄生してるだけじゃない」
「カタセとソルシエールの共同商品開発企画は相互利益をもたらす正式な契約です。不当な言いがかりはやめてください」
「はぁ? そっちこそ、身売りのような卑しい真似はやめたらどうなの!」
「身売りって……」
「私が彼と結婚したかったのに、横からかすめ取るなんて最低。理人さんは絶対に渡さないんだから!」



