理人の無情な言い草に目を見開き、言葉を失う。彼が『半分プライベートな話』と言ったのはこういう意味だったのだと理解させられた。
カタセは老舗企業ではあるものの、この十年ほどで業績は緩やかに悪化している。愛梨は再建を図るための企画として、今一番勢いのあるソルシエールにコラボ企画を持ちかけた。
その意図をわかっていて、彼は交換条件に結婚を提示しているのだ。
(コラボ企画と引き換えに、愛のない結婚を引き受けろってこと……?)
唇を真一文字に引き結んだ愛梨とは対称的に、理人は口の端を持ち上げた。
「俺との結婚に飛びつかないからこそ、あなたがいいんです。次回のプレゼンまでに検討してみてください。もちろん、いい返事以外を聞く気はありませんが」
そう言って黒い笑みを浮かべた彼が「下までお送りします」と立ち上がる。
愛梨はなけなしの意地で「結構です」と制し、ひとりソルシエールの社長室をあとにしたのだった。



