だからといってソルシエールの社長相手に余計なお世話だった。そもそも嫌みを言われて笑顔で受け流せないようでは、こうした場での社交は不可能だ。
「べっ、別に慰めようとしたわけじゃありません! ただ、あんな発言を笑顔で聞いていなくてもいいんじゃないかって思っただけで」
「へぇ?」
「な、なんですか」
端整な顔がぐっと寄せられ、至近距離で顔を覗き込まれた。あまりの近さに、愛梨は唇を真一文字に引き結んで息を殺す。
「いや? 俺の婚約者は優しいんだなと思って」
「かっ、からかわないでください!」
のけぞるように理人と距離をとった瞬間、後ろから「西澤社長」と声がかかった。
理人は振り返って声の主を確認すると、愛梨をからかっていた楽しげな笑顔から一転、経営者然として落ち着いた微笑みを浮かべる。
「エリコ先生、ご無沙汰しております。お元気そうでなによりです」
「ありがとう。あなたも随分貫禄がついたわね。初めて会った時はまだ小学生だったのに、今じゃ立派な社長だわ。ソルシエールの評判はどこにいても聞こえてくるもの」
「恐れ入ります。でもエリコ先生に社長と呼ばれるのは慣れませんね」



