脅迫婚?!~悪い噂の絶えない社長が、実は誠実で一途だったなんて信じられません!~


「うちも同族経営ですが、子供の頃から企業を背負って立つと定められて育つ苦労は当事者でないとわかりません。会社と運命をともにする、多くの社員の命運を握る、その覚悟を幼い頃から植え付けられるんですから」

愛梨もまた家業のためにこうして理人と婚約したし、朝陽だってこれから多くの勉強を強いられるだろう。上流階級だと羨まれることも多いが、苦労や重責、しがらみだってたくさんある。

若くして役職についているからといって、成果を出しているのだから外野からとやかく言われる筋合いはない。

そんなことを頭の中で考えていると、隣から食い入るような視線を感じる。

「なんですか?」
「君は俺よりも幼い頃からそうした環境で頑張ってきたんだろうな」
「え?」
「いや。つまり愛梨は、嫌みを浴びせられた俺を慰めてくれているのか?」

理人は片眉を上げる。意外だと言わんばかりの表情に、愛梨は羞恥を感じる。

(理人さんの貼り付けたような笑顔が、長年嫌みに耐え続けて身についた処世術なんじゃないかって思ったから……)