「社長という肩書きはずいぶん軽くなったなぁ。昔は相応の覚悟がある者しか、その椅子に座らなかったものだよ」
「若さというのは武器ですな。将来性というひと言で多目に見てもらえる」
今もまた、そうした会話が聞こえてくる。
こんなふうに侮られても、理人は一切笑顔を崩さない。愛梨には、それが彼の心の武装のように感じられた。
「ああいう嫌みは、気にする必要ないですからね」
「え?」
唐突な愛梨の言葉に、理人は意味がわからないといった様子で聞き返してきた。
「若いからといって会社を背負う覚悟がないはずがないし、実際理人さんは業績を上げてますよね」
ソルシエールが爆発的に人気になったのは数年前。それまでも堅実な経営をしていたが、人気ドラマの主演女優のスタイリングを担うプロジェクトを成功させたのがきっかけで、一気に知名度が上がった。このプロジェクトを推し進めていたのが、当時副社長だった理人だという。近年ではウエディングドレス事業にも参入し、成功を収めている。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。



