彼の腕に手をかけたまま小声でぼそっと呟くと、理人がちらりとこちらを見た。
「不服か?」
「いえ。だからこそ大企業を背負って立てるのだと納得しているところです」
多少の皮肉を込めて言い返すと、理人がしれっとした顔で微笑む。
「褒め言葉として受け取っておくよ」
(あ、今のも作り物っぽくない表情だ)
先ほどから理人は誰に挨拶されても感情を表に出さず、笑顔の裏で常に冷静に対応している。いわゆる営業スマイルというやつだ。
けれど、時々こうして素のような表情を見せることがある。
(そういう顔をしてる方が、ずっといいのに)
今日言葉を交わした人の中には、〝弱冠三十一歳の社長〟をあからさまに軽んじるような物言いをする者もいた。



