遠巻きに「彼が連れている女性は誰?」「女優やモデルではなさそうね」「魔法使いのミューズなんて羨ましい」といった囁き声が聞こえる。
自分に視線が向いているのだとしたら、それは理人にエスコートをされているからだ。そう言うと、なぜか彼は驚いた顔をする。
「……無自覚なのか」
「はい? なにがですか?」
「いえ、なんでもないです。それよりも、その呼び方をなんとかしましょうか。仮にも婚約者なのですから、職場以外では名前で呼んでください。俺も、愛梨と呼ばせていただきます」
たしかにこうしたパーティーにパートナーとして出席しているのに、「西澤社長」「片瀬さん」と呼び合っていては不自然かもしれない。
「では理人さんと呼ばせていただきます。それと、理人さんの方が年上なので、今後私に敬語は不要です」
「あぁ、わかった」
今日の主催者に挨拶を済ませると、理人のもとには次々に人がやって来る。彼の隣で微笑み挨拶を交わしながら、その人脈の広さに感心する。幼い頃からこうした社交場に慣れているとはいえ、集まる視線の多さに身体が竦みそうだ。



