「デザイン画はレディースのみですか?」
「親子のリンクコーデなら、このままサイズを小さくすれば――」
「うちはレディースブランドですが、カタセはキッズブランドなのでガールズ服だけでなくボーイズ服も必要になります。そもそも、そのデザインは子供服には転用できません。カタセが遵守したい安全基準に引っかかります。あなたに依頼したのはソルシエールの服ではなく、カタセとのコラボ企画のデザインです。そこを間違えないように」
指摘された新山は不満そうな顔をしたが、取り付く島もない理人を見て黙って席につく。その際、彼女はなぜかこちらを睨みつけていたが、それ以上に愛梨は彼の発した言葉に驚いた。
子供服には、引っかかりや転倒、窒息など、子供特有の事故を防ぐために安全基準が定められている。部位ごとに厳しい基準が設けられており、頭や首回りには紐の使用が禁じられていたり、腰回りの紐には長さの制限があったりする。
任意の指針のため法令ではないけれど、カタセは『子供のことを第一に考えた服』というモットーを掲げており、この安全基準を徹底して遵守している。
(うちがこだわりたい部分を、ちゃんと理解してくれてるんだ)
華やかな女性関係や突拍子もない結婚話のせいで霞んでいたが、理人はこの数年でソルシエールを急成長させた実業家だ。共同商品開発にあたり、子供服についてもきちんと調べてくれたのだろう。



