アパレル業界やモデル界隈には『西澤社長と寝ると仕事がもらえる』という悪趣味な噂まで流れていると聞く。ソルシエールの重役たちが彼に結婚をせっつくのは、そうした企業のイメージを損なう恐れのある噂を払拭したいという切実な願いがあるのだろう。
モテすぎる若き社長の女性問題が社内で不安視されているなんて、大企業が呑気なものだと愛梨は鼻白む。
噂を鵜呑みにしているわけではないが、日毎に違う女性を連れているのをパーティーで目の当たりにしているせいか、愛梨は理人に対しあまりいい感情を抱いていない。
もちろん、そんなことはおくびにも出さず、よそ行きの笑顔を作った。
「私じゃなくても、西澤社長ならいくらでも立候補する女性がいますよね」
「この顔や社長職というステータスに群がってくる女性に辟易しているんです。恋愛をしたいとも思わないし、そんな暇もない」
では彼の隣に立っていた女性たちは恋人ではなく、みんな割り切った大人の関係ばかりということだろうか。
(うわ、最低……)
なんでもないことのように説明する理人に、さらに嫌悪感が募る。



