実家で一緒に暮らしているのだ、愛梨に恋人がいなかったことくらい承知しているだろう。手放しで喜んでいた理人の両親とは違い、相手がソルシエールの社長と聞いた父は、なぜ結婚するに至ったのか薄々勘付いているように思う。
それでも、愛梨の意志は変わらない。この結婚でカタセを再興させられるのなら、父や理人の両親に対する罪悪感はあれど、後悔はないのだから。
理人から形式上の挨拶が済むと、父の隣で大人しく座っていた朝陽が、愛梨に縋るような目を向けた。
「お姉ちゃんは、このお兄さんのお嫁さんになるの?」
「う、うん、そうだよ」
『お嫁さん』と言われるとなんだかむず痒いけれど、結婚するのだから間違ってはいない。
「じゃあ、僕のお姉ちゃんじゃなくなっちゃうの?」
寂しげな顔をして尋ねた朝陽に答えたのは、驚いたことに理人だった。
「お姉さんは、ずっと朝陽くんのお姉さんのままだよ」



