「結婚に際して、私からもいくつか条件があります」
「どうぞ」
「当面の間、夕食は別々にさせてください。それから同居はしますが、週の半分は実家に帰らせていただきたいんです」
「……同居するのに、なにか問題でも?」
愛梨が提示した条件に、理人は怪訝な表情を浮かべる。
「からかいすぎましたか? あなたの意思を無視してなにかするつもりは――」
「いえ、それが理由ではありません」
先ほどのやり取りで理人がいかに女性に慣れているかがわかったし、反対に愛梨が男性に慣れていないことも察しただろう。いつも美しい女性を相手にしている彼が、わざわざ自分に手を出してくるとは思えない。
「個人的なことです。西澤社長にご迷惑はおかけしないと約束します」
同居は避けられないにしても、朝陽に寂しい思いをさせるのは嫌だし、愛梨にとっても朝陽と過ごす時間は大切なものだ。
この条件だけは曲げられないという意志を持って理人を見据えると、彼は小さく嘆息した。



