彼はクスッと笑うと、少し身を乗り出し、甘く響く低音で囁く。
「俺の子供を生みたい、ということですか? 魅力的なお誘いですね」
昼間の社内にはそぐわぬ色香を放つ理人に、愛梨はぼんっと湯気が出そうなほど真っ赤になった。
「なっ、な……」
「冗談です」
(なんて人なの! やっぱり噂通りの遊び人なんだ)
恥ずかしさと苛立ちでなにも言い返せない愛梨をおかしそうに見ながら、彼はソファに背をつけてゆったりと座り直す。
「子供に関しては、まだ先でいいと思っています。この結婚がいつまで続くかもわかりませんし」
結婚の期限はとりあえず無期限で、一年ごとに結婚生活を継続するか否かを決めるのはどうかと提案された。互いに婚姻継続が困難になった場合は話し合いの上、離婚もあり。
「業務提携も視野に入れるのならば、離婚は回避した方が賢明ですが」



