父も母も優しく穏やかで、愛梨は何不自由なく愛されて育った。そんな中でも、幼い頃から何度も聞かされ続けた言葉がある。
『片瀬家は会社と運命を共にする』
『社員の命運を握っている』
その覚悟を胸に事業を営む祖父や父を尊敬していたし、愛梨もまた知らぬ内にその覚悟が芽生えていた。一緒に働く多くの同僚のためにも、いつか会社を背負って立つ朝陽のためにも、今回の企画を必ず成功させたい。
「お返事をする前に、改めて条件を確認させていただいても?」
「もちろん」
愛梨の質問に、理人は本心の読めない笑みを浮かべる。
彼からの条件は、早めの入籍とパーティーへの同伴。仕事は続けるもやめるも愛梨の自由。生活費などはすべて理人が持つという。
「仕事、続けてもいいんですか?」
「もちろんです。どうしてですか?」
「西澤社長が結婚したい理由のひとつに、ソルシエールの後継者を望んでいるのもあるんじゃないかと思いまして」
「あぁ、なるほど」



