そう言って肩を竦める彼は、誰が見ても整った美しい容貌をしている。
知的さを感じさせる癖のない黒髪に、意志の強そうな目元。正面に立つと威圧感を感じるほどの長身だが、常に余裕のある笑みを湛えている。品格と色香、さらには貫禄まで纏う彼は、極上の男性という表現がぴったりだ。
そんな理人は今年で三十一歳。今の時代、結婚を急ぐ年齢ではないように思うが、『ソルシエール』という大手レディースアパレルブランドの社長という地位を考えると、彼の両親が身を固めてほしいと願うのも頷ける。
(ソルシエールもうちと同じで同族経営だし、後継者をもうけるのも社長の仕事のうちって考えなのかも)
老舗子供服メーカー『カタセ』の社長令嬢である愛梨にも、その考え方は理解できる。カタセもまた、伝統や責任、誇りとともに親から子へと会社が受け継がれてきたのだ。
〝昔ながらの古臭い考え方〟と言われようと、経営者一族に生まれた責任は重い。
だからといって、なぜ理人が自分に結婚の提案をしているのか。彼ほどの男性ならば、どんな女性でもよりどりみどりなはずだ。
現に理人はパーティーで会うたびに誰かしら女性を連れているが、見るたびに相手が違っていた。それはモデルだったり誰もが知る女優だったりと、華やかな美女ばかり。



