ヒソヒソと囁き合っていると、ノックの音が響く。
「遅れて申し訳ありません」
突然入室してきた理人の存在により、その場の空気がピリッと引き締まる。失礼な発言でプレゼンの流れをぶった切った新山も急に大人しくなり、理人に熱視線を送っていた。
愛梨はため息をつきたくなるのをグッと我慢してプレゼンを再開し、前回課題として持ち上がった購買層の違いと、ブランド価値を下げないコンセプト、さらにソルシエールとカタセがコラボする意義などを丁寧に説明する。
久住や藤森だけでなく理人からもいくつか質問や鋭い指摘が入ったものの、彼らの反応は悪くない。愛梨は手応えを感じながらプレゼンを終えた。
資料が閉じられ、しばし会議室に沈黙が続く。理人は口元に手をやり、真剣な表情で微動だにしない。
(い、胃が痛くなりそう……)
たった数十秒が、何倍もの長さに感じる。ようやく理人が口を開いた。



