とはいえ、次期トップの座を奪われたとは思っていない。カタセは代々直系の男児があとを継いできた。母がずっと息子を産めなかったことを気にしていたのも、朝陽が生まれた時には泣いて喜んでいたのも知っている。
愛梨は母の最期の願いを叶えるため、片瀬に入社したあとも役員には名を連ねず、一社員として働いている。よく聞く後継者争いなどという火種を生まぬよう、自分の意志で決めた。
(そういえば、西澤社長と結婚するのなら私がソルシエールの後継者を生むってこと……?)
ふと疑問が思い浮かび、愛梨は硬直する。
一族経営のトップに立つ彼と結婚するのだ、当然子供を望まれるだろう。
(ということは、あの人に抱かれるってこと……? いやいや待って、無理!)
壮絶な色香を纏って見下ろしてくる理人を想像してしまい、愛梨は思考を振り払うように頭を揺らす。
女性を取っ替え引っ替えしていた理人にとってはなんでもないことだろうが、恋愛経験すらない愛梨にとって、そうした行為は想像ですらハードルが高い。



