脅迫婚?!~悪い噂の絶えない社長が、実は誠実で一途だったなんて信じられません!~


朝陽は好奇心旺盛で気になることはとことん知りたがるため、六歳にしては語彙力も知識量も多い。もっと幼い頃から「これはなに?」「それはどうして?」と聞きたがる子だった。

それに毎回答えるのは大変なこともあるけれど、知識や情報をぐんぐん吸収して成長する朝陽を見守るのは、愛梨にとって大きな楽しみである。

仕事を終えたあと真っすぐに帰りたい理由が、この朝陽だ。

十九歳離れた弟は、とにかく可愛い。朝陽に寂しい思いをさせないため、なるべく定時で仕事を終えて帰宅している。

愛梨と朝陽の母は、朝陽を生んだ半年後に乳がんが見つかり、その約一年後にこの世を去った。愛梨は大学三年、朝陽はまだ一歳半だった。

『愛梨、朝陽をよろしくね。この子を、立派なカタセの社長に育ててあげて』

それまで愛梨は自分が婿を取ってカタセを盛り立てていかなくてはと思っていた。けれど病床の母からそう言われ、もう自分はこの家の後継者ではないのだと実感した。