『彼、もうあなたを抱いてくれた?』
『ふふ、そんなわけないよね。だって愛されてないんだもん。残念ね、彼との情熱的な夜を知らないままなんて』
パーティーで理人の結婚を知った直後のマウントも、愛梨に対する敵意も、根本には理人への好意ゆえだと感じる。
愛梨の疑念を汲み取ったのだろう、理人は続けて言った。
「以前から彼女の好意には気付いていたし、それらしい誘いを受けたこともあるが、誓ってなにもない。契約を結んだ当初は職場であそこまであからさまな態度を取ることもなかったから油断していた」
「……以前新山さんから、理人さんと関係があったような話を聞きましたが」
さすがに彼女の言い放ったセリフをここで口にする気はなく濁して伝えると、彼は絶句して目を瞠った。
「あり得ない。いつの話だ?」
「繊維協会の周年パーティーの時に……」
あからさまに嫌悪の滲んだ理人の声と表情に、愛梨は新山の悪意ある嘘だったのだと悟った。



