「あのあと、新山さんは大丈夫でしたか?」
「あぁ。自分から下りると言った割にごねていたが、契約は解除する方向で動いてる。無責任な人間にプロジェクトは任せられないし、なにより仕事相手に敬意を払えないようでは話にならない」
理人はなんの感情も挟まず、淡々と言った。きっと経営者として当然の判断なのだろう。
新山はブランド統括である久住が期待してスカウトし、祖母のエリコの名前もあって起用に至ったが、今日の発言はさすがに看過できなかったらしい。
「『理人さんから直々に依頼されて契約してる』って本人は言ってましたけど」
「契約の場に立ち会ったし、もちろん社長である俺の名前で契約書が作られているが、俺が直々に依頼した事実は一切ない」
「元々知り合いだったんですか?」
「知り合いと言っても、パーティーで挨拶したり、エリコ先生を交えて食事をしたことがある程度だ。彼女はまだ学生だったが、エリコ先生について回っていたからな」
本当にそれだけだろうか。
以前、理人は『新山さんはうちが契約しているデザイナーであって、それ以上の関係はない』と言っていたが、彼女のあの態度はあきらかに理人に想いを向けていた。



