脅迫婚?!~悪い噂の絶えない社長が、実は誠実で一途だったなんて信じられません!~


だからこそ特別扱いされたり遊び半分で働いていると思われたりするのは嫌で、がむしゃらに仕事に打ち込んだ。愛梨がサンプルや色見本に埋もれながら仕事する様子を見た同僚からは『思ってた社長令嬢と違う』と笑われ、同期の美嘉や直属の上司である真山といった周囲の人に恵まれたことも手伝い、今では〝お嬢様〟という身分をネタにからかわれるくらい周囲に溶け込んでいる。

〝社長の娘〟という切り札を使ったのは、今回の企画を強引に押し通した時が初めてだ。

「なぁ、景気づけに飲みに行かないか?」
「真山さん、彼女できたんじゃないですか? 噂になってましたよ、デザイナー部の新人さんといい雰囲気だって」
「あぁ。いや、断ったから」

バツが悪そうに視線を外す彼に、新人の子の告白が実らなかったのだと理解した。

「そうだったんですか。すみません、てっきり噂通りうまくいったのかと勘違いしてました」
「なんだろうな。気を持たせたつもりはなかったんだけど、思わせぶりだってめちゃくちゃ詰られた」
「それは……なんと言ったらいいか」

真山は男女問わず慕われているし、恋愛対象としても人気がある。目を惹く美形というわけではないけれど整った顔立ちをしているし、ガッシリとした体躯と面倒みのよさも相まって頼もしい。その上、気さくで優しいとくればモテるのも納得だ。