「だって普段はあんまり気にしないけどさ、お前は正真正銘カタセの社長令嬢だろ? 重役はみんな伝統とか格式とかを重んじて斬新な企画には手を出さないし、SNSでの販促ツールにすらいちいち嫌な顔をする。そんな中で育ってきたお嬢様が、他社に下手に出てまで『コラボ依頼をするべきだ』なんて言い出すとは思わなかったんだよ」
愛梨は納得して苦い笑みを零した。
真山の言いたいことは、よくわかる。カタセは伝統を重んじるきらいが強いため、新しい企画が通りにくい。『トレンドを追うのは品がない』だとか『軽薄なファストファッションの真似はしない』だとか、重役たちは企画開発部が提案するものに難色を示してばかり。
しかしハイブランド市場が縮小している中、今のまま売上が低迷し続ければ、海外の店舗を畳まなくてはならない時が来てしまう。
そう言ってまずは社長である父を説得して重役会議にかけてもらい、何度もこのコラボの意義を説明した。ほぼ愛梨の粘り勝ちでGOサインと出させたという経緯がある。
「私は保守派ではないですよ。〝子供服といえばカタセ〟と言われていたのは、もう昔の話です。過去の栄光にしがみついていても未来はないですから」



