それは理人も同じだ。心から愛する女性に出会ったことがあったならば、あんな提案はしなかっただろう。
(壁を壊してまで愛梨を手に入れようとする気概のある男が彼女の周りにいなくて、本当によかった)
理人は、そっと愛梨の手を取った。
「男に慣れる必要はないけど、俺には慣れてほしい。誰かに寄りかかる安心感も、男に愛される喜びも、全部俺が与えたい」
「あ、あの……」
「手に触れられるのは、嫌か?」
ふるふると首を横に振る愛梨に、もう一歩近づく。
こちらを見上げる愛梨の瞳が、恥ずかしさからかほんの少し潤んでいる。
この瞳に映る男は、自分だけでありたい。同じように理人の瞳に映るのも、この先一生愛梨だけだ。
躊躇いがちに頬に触れてみる。彼女は小さく首を竦ませたものの逃げもせず、ただ理人を見つめていた。
単なる無防備なだけなのか。それとも、少しは彼女も理人に心を寄せてくれているのか。



