脅迫婚?!~悪い噂の絶えない社長が、実は誠実で一途だったなんて信じられません!~


老舗企業の社長令嬢なのに一社員として働いているのも、カタセに対し誇りを抱いているのも好ましい。

なにより以前パーティーで会った時に向けられた視線がお世辞にも好意的ではなかった。恋愛感情を抱かれても厄介なので、いっそ好都合だと考えて結婚を申し込んだのだが。

「まさか、こんなにも魅力的な女性だったとはな……」

結婚の条件を提示した時に見せた飾らない表情も親しみやすく可愛らしいと感じたが、ソルシエールのドレスを纏った姿は、これまでビジネスでパーティーに同伴してきたどんな女優やモデルよりも美しかった。

それなのに本人は自分の魅力に無自覚で、周囲からの視線は理人の隣にいるせいだと本気で思っているのだから困ったものだ。

愛梨の魅力は外見だけではない。

理人に対するあからさまな嫌みが耳に入った際に愛梨が放った、あの言葉――。

『ああいう嫌みは、気にする必要ないですからね』
『子供の頃から企業を背負って立つと定められて育つ苦労は当事者でないとわかりません。会社と運命をともにする、多くの社員の命運を握る、その覚悟を幼い頃から植え付けられるんですから』