女優やモデルからそうした誘いが多々あったのは事実だが、すべてビジネスに徹して丁寧に断っている。仕事が忙しかったのもあるし、欲望渦巻く界隈で女性の裏側を見すぎて辟易していたのも理由のひとつだ。
社会人になって以降、恋人だけでなく深い関係になった女性さえひとりもいない。元々、男としての欲も淡泊なため困ることはなかったし、仕事が楽しくて恋愛に興味が湧かないのだ。
そうしているうちに父から社長職を引き継ぎ、ある程度地盤を固めた今、そろそろ結婚して家庭を持つべきだという声が上がってきた。
いまだ結婚をしてこそ一人前とみなす風潮は根強く、社内からも業界内で広まる妙な噂を払拭したいという圧があったし、なにより既婚者という肩書きを得れば、職場にも関わらず色目を使ってくる女性や婚姻関係を結んで権力を握ろうとする野心家からの見合い話をすべて断る口実になる。
恋愛結婚という選択肢は端から除外しており、煩わしい恋愛感情の絡まないドライな結婚が出来そうな女性を探していた。
とはいえ、誰でもよかったわけではない。仕事の邪魔をされるのは御免だし、虚栄心ばかり強くて自分ではなにもできない女性には興味がない。
その点、愛梨は理想に近い結婚相手だった。



