「好きだからこそ触れたいと思ってることだけ、覚えておいて」
声を潜めて囁くような理人の低く甘い声音に、思わず息を呑む。
まるで度数の高いアルコールを一気に呷ったように頭の芯がじんと熱を帯び、鼓動がやけに大きく聞こえる。
「……好き? えっと、それは人としてってこと、ですよね?」
「ここでそういう質問をしてくるところが、六歳の朝陽くんにさえ鈍感と言わしめる愛梨らしいな」
違う、と理人は優しい声で窘めた。
膝の上にある愛梨の手に、理人の手が重なる。
「あんな結婚を提案した過去の自分を殴りつけたいくらい、女性として君に惹かれてる」
愛のない結婚だと思っていたからこそ、一緒に住み始めても理人を恋愛対象として見たことはなかった。
異性として整った容姿をしている彼を素直にカッコいいと思うし、仕事に対する考え方を知った今では、手を重ねられても振り払うという考えが浮かばないくらいには好感を抱いている。



