「正直、元々理人さんにはあまりいい印象がなかったのに、あんな言い方で結婚を提案されたから物凄く腹が立ちました。でも、もう気にしていません。脅されようと、身売りと言われようと、この結婚を決めたのは私ですから」
「……身売り? 誰がそんなことを」
これまで神妙な面持ちで聞いていた理人のこめかみが、ピクリと引き攣る。パーティーの時に新山に言われたのだが、今はそこはどうでもいい。
「とにかく、謝罪は不要です。理人さんと話していると、私だけでは考えつかなかったような新たな発見がもらえるんです」
だから理人との結婚を承諾したことを後悔はしていないと、彼の目を見てしっかりと伝える。
「今回のコラボの件だけでなく、今後も公私ともにいいパートナーになれたらいいなと思っています。愛情はなくても、信頼関係で結ばれる夫婦がいたっていいですよね」
そもそも愛梨だって朝陽が生まれるまでは、カタセの利になる男性を婿に迎えるつもりでいたのだ。恋愛感情だけで結婚するとは思っていなかったし、今となっては相手が理人でよかったとさえ感じる。
だから気にする必要はないと微笑んだのだが、彼はなぜか焦燥に駆られた様子でこちらを見つめていた。



