愛梨は生まれた時から静江がいてくれたため、ほとんど自分で料理をしたことがない。もちろん学校の調理実習などは経験しているためレシピさえあれば最低限のものは作れるだろうが、朝陽に食べさせられるレベルのものが作れる保証はない。
それならばレストランに行こうと提案しようとしたところで、理人が「じゃあ、みんなで一緒に作ろうか」と答えた。
「朝陽くん、料理はしたことある?」
「ううん、ない。いっつも静江さんが作ってくれるから」
「実験みたいで楽しいよ。やってみるか?」
「いいの? やりたい!」
まさかの回答にぎょっとする。
「理人さん、お料理できるんですか?」
「得意とは言わないけど、ひと通りは。その様子だと、愛梨は苦手?」
「……この年で恥ずかしいんですけど、ずっと任せっぱなしだったので」
いずれ結婚するまでに練習しておかなくてはと考えてはいたのだ。けれど朝陽の世話と仕事で手一杯になり、静江の『家事は私の仕事ですから』という言葉に甘えていた。



