「……そんなに切羽詰まった顔してましたか?」
「君が今回の企画にどんな思いを抱いて望んでいるのか、経営者として少しは理解しているつもりだ。けど、デスクにかじりついて頭を悩ませてばかりいても突破口が開けるわけじゃないからな」
愛梨の質問の答えを濁してくれたのは、彼なりの優しさなのだろうか。
「連れてきてくれて、ありがとうございます。ここに来なかったら、このアイデアは浮かばなかったかもしれません」
「それはよかった」
気分転換やアイデア探しといった目的は達成された。それならば、もう帰宅しても問題はない。けれど――。
「理人さん、あの」
「愛梨。もう少し時間はあるか?」
まさに今、同じことを尋ねようとしていた愛梨は、目を瞬かせる。
「実家に顔を出すつもりだと言っていただろう。何時頃の予定?」
「特に時間は決めてないんです。週末も行くねって朝陽に言ってあるだけで」
「それなら、まだ帰らなくても大丈夫か?」
「はい。私も、まだ帰りたくないなって思ってたので」



