「カタセの強みは、うちにしか作れない品質だからね。商品を買ってくれるお客様の信頼を裏切りたくないし、安全と高品質は譲れない」
愛梨は強く言い切った。新しい風が必要だと思っているけれど、カタセがこれまで培ってきた技術力を蔑ろにしたいわけではない。愛梨自身が着て育ってきたため自社製品に愛着があるし、品質の高さではどこにも負けない自負がある。
「かぁっこいいー。さすが、お嬢」
「もう、茶化さないでよ」
茶々を入れる美嘉を睨みつける。彼女は愛梨と違って小柄で、可愛らしいゆるふわ系女子といった見た目だが、中身は男前という言葉が似合うしっかりした女性だ。社長令嬢の愛梨にも媚びたり萎縮したりせずに、入社当時から仲良くしてくれている。
美嘉はクスッと笑ったかと思うと真面目な顔に戻り、カタセの今季のサンプルをソルシエールの隣に並べた。
「でも正直なところ、デザインは〝昔ながら〟って印象が抜けないよね。〝りっちゃん〟のワッペンも今回は封印でしょ」
りっちゃんとは、カタセの創業当初に作られたリスのキャラクターだ。りっちゃんのワッペンがついたシリーズは昔から根強い人気があり、他に靴下やブランケットなどの小物にも刺繍されている。
愛着があり可愛いと思うけれど、たしかにソルシエールの世界観を考えれば、今回は封印せざるを得ないだろう。



