「単刀直入に言います。このコラボ企画と引き換えに、俺と結婚しませんか?」
真っすぐにこちらを見つめる彼の眼差しには、少しの熱もこもっていない。ただ淡々と、そうすることが最善だと自身の考えを提示しているにすぎないのだろう。
片瀬愛梨は重厚なソファセットに浅く腰掛けたまま、不可解な提案をしてきた男性を目を眇めて見つめ返す。
先ほど、彼は『ここからは半分プライベートな話になりますが』と前置きした。ということは、もう半分は仕事の延長だという意味だ。
そもそも愛梨は、この会社に商談をしにやって来た。それがプレゼンを終えた途端にひとり彼に呼ばれ、こうして社長室で向かい合って座り、結婚しないかと持ちかけられている。
商談相手の社長に失礼があってはいけないとわかっていながらも、言わずにはいられなかった。
「……仰っている意味がわかりません」
愛梨は無表情で黙っていると「怒ってる?」と聞かれるほどキリッとした目力のある大きな瞳で相手を見据えた。



