氷の外科医

「美雨、大丈夫だ。俺を見て」



思考を読み取るように、裕人は美雨の顔を覗き込み、手袋越しに温かく包み込む。



「ここにいる。ずっと側にいるからな」



「……うん……っ」



手術台へ移ると、心電図の電極や血圧計が手際よく装着され、着々と手術開始へ向けての準備が整っていく。



されるがまま落ち着かない様子の美雨に、麻酔科医が穏やかな声で話しかけ、酸素マスクが口元に当てられた。



「瀬名さん、今から少しずつ眠くなるお薬が入っていきますよ。
ゆっくり深呼吸してくださいね」



声に従い深呼吸をすると、視界が急激にゆらゆらと歪み始める。



美雨の指先がかすかに震えているような気がして、裕人はその手をぎゅっと力強く握った。



意識が落ちる寸前だったのだろう、美雨は握り返してこない。





「美雨、おやすみ。またあとでな」





耳元で聞こえた裕人の甘く力強い声を聞きながら、美雨の意識は深い深い闇の中へと落ちていった。