氷の外科医

「術前評価も完璧だ。
美雨が麻酔から目を覚ますまで、俺がずっと側にいるから。
だから不安にならなくても大丈夫」



手術前夜、消灯時間を過ぎても病室に残り、握った手を離そうとしない裕人。



「ねぇ裕人……明日は本当に眠ってる間に終わっちゃうんだよね…?」



「そうだ。
深呼吸を数回したら、一瞬で温かい眠りに落ちる。次に目を醒ました時には全部終わっていて、拍子抜けするはずだ。
だから怖がる暇なんてないぞ」



裕人は美雨のおでこに静かに唇を寄せた。



「俺が必ず美雨を元通りにするから。
俺を信じて任せてほしい」



「うん……信じてる。私も頑張るね」



その言葉に、裕人は安心したように優しく微笑んだ。



反面、言葉とは裏腹に美雨の心の中は相変わらず落ち着かない。



裕人の顔を見ていると、どうしても甘えた気持ちが顔を出し、泣きつきたくなってしまうのだ。



本当は怖くてしかたない。


手術なんて受けたくない。 



そんな弱い心を押さえ込み、本音を悟られないように美雨は裕人に明るく話しかける。



「そういえば、神島先生も知ってたね、“冷徹レーザーメス”」



「おい…っ。
いや、まさか本当に浸透しているとはな……」



本音を隠して、美雨は笑ってみせた。



「ふふっ。少しは皆んなにも優しくした方がいいんじゃない?」



「なっ……!俺は美雨にしか優しくできない」



耳を赤くして視線を泳がせる裕人。



「またそんなこと言って。

あ、もうこんな時間……
ほらっ、もう今日は帰って寝て!明日寝不足のまま手術することになっちゃうよ?」



「ああ。あと1時間したら帰るよ」



「もう〜!」