氷の外科医

手術が決まった翌日から、美雨の術前検査が急ピッチで進められた。



「美雨さん、採血と心電図取りますね〜。

黒崎先生が心配しすぎて『注射針は一番細いので!』って何度も念押ししてきて面白かったわ」



「ふふっ、本当に裕人は……」



長谷川が笑いながらテキパキと準備を進める横で、美雨の胸の奥には依然として消えない恐怖の影があった。



全身麻酔、胸腔鏡、自分の呼吸を機械に委ねる時間——


どれをとっても恐ろしい。



しかし、業務の合間を縫っては何度も病室に顔を出し、手を握ってくれる裕人の真剣な瞳を見ていると、弱音を吐いて困らせてはいけないような気がしてくる。


自分のためにこんなに尽くしてくれる裕人に、これ以上負担をかけてはいけないと、美雨は逃げ出したい気持ちを必死に抑え込んでいた。