奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


あまりの至近距離に、息をするのも忘れてしまう。

「あ、あの!…ゴメンナサイ、ありがとう……」

心臓の動きが速くなり、私は急いで月島君の腕の中から逃げ出して距離を取る。

形はどうであれ、生まれて初めて“男子”の体温をこんなに近くで感じてしまったのだ。
恥ずかしさで、彼の顔を見ることができない。


そんな私の困惑なんか最初から計算のうちだったかのように、彼は私の右手を優しい手つきで包み込む。

そして、信じられないことに月島君はその場で静かに片膝をつき、私を見上げるようにして跪いたのだ。

前髪の隙間から、黒く美しい瞳が私を見つめ、一言こぼす。

「あなたの不運の確率は、僕が隣にいることで0%になります」

驚きに息をのんだ次の瞬間、私の手の甲に彼の唇が押し当てられる。

…!!
な、何が起きてるの……!?

この状況が現実のものとは思えず、完全に思考が停止する。


「あのっ!とにかく、ありがとう…!」

限界を迎えた私は、月島君の手を強引にほどき、振り返ることもせず、学校を飛び出した。


「~~~っ!!なんなのよ、いったい!」
走りながら、熱を持った手の甲を、もう片方の手で必死に押さえ込む。

顔の赤さは引かず、私の叫ぶような独り言だけが、夕暮れに溶けていったのだった。