「ねぇ、あの子、誰なの?」
退屈な始業式が終わり、ざわめく教室。
私は1年生の頃からの親友、山田実夕(ヤマダ ミユ)に今朝の奇妙な出来事を話していた。
「知らないの?学園内でもかなり有名だよ。月島玲央(ツキシマ レオ)」
実夕は少し小さめの声で、その名前を口にした。
「運動もできるし、常に学年トップの成績を争ってる天才児。異常な観察眼と直感の持ち主で、学園内では“奇怪な天才”って言われてる子だよ。ただ、あの独特な雰囲気のせいで、特別モテるって話は聞かないけど」
「ふーん……。全然知らなかった」
「あははっ」
反応の薄い私に、実夕は呆れたように笑う。
「そりゃそうでしょ!柚葉は男子にも恋愛にも興味ないんだから。…あっ、いけない!今日、部活のミーティングあるの忘れてた!ごめん、柚葉!私、もう行くね!」
実夕はそれだけ言って、教室を飛び出して行った。
……いつも忙しそう。
その後ろ姿を見送りながら、私は机の上の荷物をスクールバッグに詰め込み、帰り支度を始めた。
