奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


私は、あまりにも突然な提案に、思考が完全に停止してしまう。

空けられたままの隣の座席。
そこへ天然パーマの黒髪少年が、いつも通りの独特な雰囲気で近付いて来るのが見えた。

時間を置いて、月島君が私の隣の席へ座る。


バスが発車し、少しの揺れが心地よい。

私は、どんな言葉をかければいいのか、完全にわからなくなっていた。

そんなとき。

トン、と微かな衝撃と共に、私の肩に月島君の頭がもたれかかってきた。

なんで…!
どうしてこの人はまた想像の斜め上をいく、奇怪な行動をするのよ!

息がうまくできなくなるほどの密着。
月島君は私の肩に頭を乗せたまま、静かに囁いた。

「僕から離れたら、死んじゃいます。……僕が」

ひどく切なくて、甘い声でそれだけを告げると、月島君は何も言わず、寝息を立て始めた。
規則的な呼吸が、私の肩を通じて伝わってくる。




あぁ、私……。


認めざるを得なかった。
この胸の痛みの正体を。

生まれつきの不運体質なんかじゃない。

私はこの奇怪な少年に、どうしようもないくらい恋してしまっているのだ、と。