奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


バスに乗り込むと、実夕は私を窓側の座席へと座らせた。

そのまま当然のように、実夕も隣へ腰掛けるだろう…。
そう思っていた私の予想は、呆気なく外れる。

実夕は何故か私の隣を素通りし、ひとつ後ろの席へと移動したのだ。

「え、実夕……?」

困惑した私は、痛む身体でどうにか後ろへと振り向き、疑問の視線を向ける。

すると実夕は、座席の背もたれから身を乗り出し、私の耳元へと口を近付けた。

「帰りのバスは、月島の隣に座ってあげて」

いつになく真剣な、でもどこか楽しそうな実夕。

「月島ね、さっき本当に世界が終わるんじゃないかってくらいの顔して柚葉のこと探してたんだから。……じゃ!」

それだけ伝えると、実夕は自分の座席に深く腰掛けた。