奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


「柚葉~っ!」

遠くから、私を呼ぶ実夕の声がする。

「川の近くの斜面にいました。どうやら、滑り落ちたみたいですね」

月島君はそう言いながら、近くにあった木製のベンチに優しく私を下ろした。
……いつものクールな表情に戻ってる。

「実夕、心配させてゴメンね」

「本当に心配だったんだから!月島なんか、柚葉が戻って来ないって気付いたとき、いつもの余裕全部放り出して探しに走ってたんだよ!」

実夕の言葉に、私は思わず目を丸くする。
視線を向けると、月島君はバツが悪そうに、天然パーマの黒髪を、くしゃりと掻いた。


「おーい、帰る時間だ!遅れるな、みんなバスに乗れ」

先生の大きな声が、課外授業の終わりを告げる。
それを合図に、生徒たちは一斉に荷物をまとめ始めた。

「柚葉、今度は私が肩貸すから!ほら、遠慮なく掴まって?」

「うん、ありがとう、実夕」

私は月島君に対する、溢れそうな気恥ずかしさを誤魔化すように頷き、実夕の肩へ掴まるのだった。