奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


「月島、君……」

その名前を呼んだ瞬間、張り詰めていた心の糸が切れた。

恐怖のどん底から一瞬で助けられたような安心感に、堪えていた涙が次々と溢れだしてくる。

月島君は私の隣に座り込むと、指先で涙を拭ってくれた。
その指先は、驚くほど温かくて、優しい。

「急に名前で呼んだりして、すみませんでした」

こんな状況だというのに、月島君はまるで時間がそこだけで止まっているかのように、ぽつりと謝罪の言葉を口にした。

変なところで罪悪感を覚えているらしい。
その不器用さに、私はホッとする。

「いいよ、そんなの。だって、こうやって助けに来てくれたんだから」

「無事で良かったです。……でも、その足では歩けそうにないですね」

怪我を負った足を見て、そう言った瞬間、私の身体がふわりと持ち上げられる。

……あの、階段でのときと同じだ。

温かい彼の腕の中に、私は抗うことも忘れて身を委ねたのだった。