奇怪な天才は、私の不運をゼロにする。


「痛っ……」

痛みに耐えながら、泥で汚れた上半身を起こす。
幸いなことに、骨は折れていないみたい。

けれど、足首に走るズキズキとした痛みで、立ち上がることさえ難しい。

「だれ、か……、助けてっ!」

掠れた声を絞り出す。
だけど私の助けを求める小さな声は、近くを流れる川の音にかき消された。

このまま、ずっと誰にも見つけてもらえなかったら。
暗い夜がきても、私は1人きりで……。
そんな絶望が、じわじわと私の中に広がっていく。

そのときだった。

ガサッ……、ガサッ……。

川の音に混ざって、落ち葉を踏む足音が聞こえた。
もしかして、なかなか戻ってこない私を心配して、実夕が探しに来てくれたのだろうか。

「……実夕?」

音がした茂みのほうを、じっと見る。
草木の向こうから現れたのは……

月島玲央だった。