ENFJホストは、30歳INFJフリーターの初恋でした。




集中治療室。



扉の向こうは。



静かだった。



規則的な機械音。



看護師たちの足音。



そして。



その中央に。



由夏がいた。



たくさんの機器に囲まれ。



眠っている。



蓮は。



ゆっくりとベッドの横へ歩いた。



「……由夏」



返事はない。



蓮はしばらく。



何も言えなかった。



ただ。



そこにいる由夏を見つめていた。



さっきまで。



自分の目の前で笑っていたのに。



今は。



目を閉じたまま。



「……」



蓮はベッドの脇に立つ。



そして。



そっと由夏の手に触れた。



「……俺、ここにおるからな」



返事はない。



「もう頑張らんでええから」



自分でも。



何を言っているのか分からなかった。



ただ。



声を掛けずにはいられなかった。



その時。



ほんのわずかに。



由夏の指が動いた。



「……?」



蓮が顔を上げる。



「由夏?」



ゆっくり。



由夏の瞼が動いた。



「……」



目が、ほんの少しだけ開く。



「由夏!」



蓮が身を乗り出す。



「分かるか?」



由夏の視線が。



ゆっくりと動いた。



まだ。



はっきりとは見えていない。



それでも。



目の前にいる人だけは。



分かった。



「……だい、ひょう……」


「俺や」



蓮の声が震える。



「ここにおる」


「……」



由夏の唇が。



かすかに動く。



「……よかっ……た」


「何がや」


「……みんな……」



蓮の胸が詰まる。



「愛莉さん……湊さん……」


「大丈夫や」


「……そう……ですか」



由夏は。



ほんの少しだけ安心したように。



目を閉じかける。



「由夏」



蓮が呼び止める。



「俺のことはええから」


「……」


「自分のこと考え」



由夏の目尻から。



一筋の涙が流れた。



「……すみ、ません」


「謝らんでええ」


「……」


「ほんまに」



蓮は。



そっと手を握った。



「もう何もせんでええから」



由夏の指が。



ほんの少しだけ。



蓮の指を握り返した。



そして。



また目を閉じた。



「由夏?」



反応はない。



看護師がモニターを確認する。



「大丈夫です。眠っていらっしゃいます」



蓮は。



しばらくその場に立っていた。



やがて。



看護師に促され。



部屋を出る。