救急隊員が駆け寄る。
「こちらへ!」
蓮は抱えていた由夏の身体を、
救急隊員の指示に従ってゆっくりと地面へ預ける。
「意識ありますか?」
「さっきまで……喋ってました」
蓮は由夏から一瞬も目を離さず答えた。
「分かりました」
救急隊員が由夏に声を掛ける。
「聞こえますか?」
「……」
反応は弱い。
「分かりますか?」
由夏の瞼がわずかに動く。
「……」
「大丈夫です。今から病院へ運びます」
救急隊員が手際よく処置を進めていく。
蓮は少し離れた場所で、その様子を見つめていた。
「……大丈夫ですか」
思わず声が漏れる。
救急隊員は処置を続けながら答えた。
「今、できる限りの処置をしています。病院へ搬送します」
「俺も行きます」
「ご家族の方ですか?」
「……いえ」
一瞬、蓮の言葉が詰まる。
「ここの代表です」
「分かりました。搬送に支障がなければ、付き添いとして同乗していただけます」
「お願いします」
蓮は救急車へ乗り込んだ。
「愛莉、湊」
「はい」
「病院、後から来てくれ」
「分かりました」
愛莉の声が震える。
「由夏ちゃん……由夏ちゃん……っ、絶対大丈夫やから!」
扉が閉まる。
サイレンが鳴る。
救急車が走り出した。
°⭐︎′**⭐︎・°*⭐︎
救急車の中。
救急隊員が慌ただしく処置を続けている。
蓮は座席から、由夏を見つめていた。
「由夏……」
返事はない。
さっきまで自分の隣で働いていた人間が。
今は目を閉じたまま、何人もの救急隊員に囲まれている。
「大丈夫やからな」
自分に言い聞かせるように呟く。
「絶対、大丈夫や」
けれど。
握り締めた拳は。
震えていた。
