ENFJホストは、30歳INFJフリーターの初恋でした。




1人。



また1人。



店の外へ。



店内に残っている人数が減っていく。



「出口まで行ったら、そのまま道路側へ!」


「振り返らんといて!」



由夏は最後尾で指示を出す。



蓮はその少し前。



女性客は、なおも怒り狂っていた。



そして。



「……何よ」



女性が視線を動かした。



「こんな店……」



目に入ったのは。



煌びやかなシャンパンタワー。



「こんなもの……!」



女性は卓上のタワーを掴んだ。



ガシャーン!



大量のグラスが床へ落ちる。



「……っ!」



由夏が息を呑む。



また1台。



ガシャーン!



さらに1台。



店内に破壊音が響く。



蓮は女性を刺激しないよう、一定の距離を保っていた。



「もうええから」



蓮が低く言う。



「落ち着いて」


「うるさい!!」



女性が振り返る。



そして。



その視線の先に。



蓮がいた。



「……あんた」



蓮が動きを止める。



「全部、あんたのせいや」



女性が銃を向ける。



「……!」


「代表!」



由夏の声。



その瞬間。



女性の指が動いた。



__パンッ!!



「__代表!!」



考えるより先に。



由夏の身体が動いた。



蓮の前へ。



覆い被さるように。



両腕を広げる。



次の瞬間。



背中に。



強烈な衝撃が走った。



「……っ」



息が。



できない。



身体から力が抜ける。



「……由夏?」



蓮の声。



由夏は何かを言おうとした。



けれど。



声が出なかった。



膝から崩れ落ちる。



「由夏!!」



蓮が受け止める。



腕の中へ倒れ込んできた身体は。



驚くほど軽かった。



「おい……!」



蓮の声が震える。



「由夏!!」



返事がない。



「由夏、しっかりせぇ!」


「……」



由夏の瞳が、ゆっくりと蓮を捉える。



ぼやけている。



何も見えない。



身体が冷たい。



痛みすら、もう遠い。



それでも。



蓮の顔だけは分かった。



ずっと好きだった人。



高校時代から。



1度も忘れられなかった人。



その人が。



自分の目の前にいる。



「……だい、ひょう」


「喋んな!」



蓮は由夏の身体を抱き締める。



「誰か!救急車!」



叫び声が響く。



由夏の頬を。



一筋の涙が伝った。



「……にげ、て」


「は?」


「はやく……」



由夏の声は掠れていた。



「代表……だけでも……」


「何言うてんねん!」


「みなさん……」


「俺が置いていけるわけないやろ!」



蓮の声が震える。



「由夏!」


「……」


「頼むから、目ぇ閉じるな」


「……」


「俺のこと見てて」


由夏は答えられない。



ただ。



静かに涙を流した。



__この人が無事なら。



それでいい。



そう思った。



その直後。



遠くからサイレンの音が聞こえた。



そして。



駆けつけた警察官によって、女性客は取り押さえられた。