ENFJホストは、30歳INFJフリーターの初恋でした。




しかし。



事態は、由夏たちが想定していたよりも遥かに早く悪化した。



「ふざけんな!!」



女性が叫ぶ。



そして。



鞄へ手を入れた。



「……?」



由夏が眉を寄せる。



次の瞬間。



女性が取り出したものを見て。



「__!」



空気が凍った。



拳銃。



本物だった。



「……っ」



思わず息を呑む。



女性は震える手で銃を握り。



「動くな!!」



店内に絶叫が響く。



そして。



__パンッ!!



天井へ向けて、1発。



乾いた音が店内を貫いた。



悲鳴。



グラスが割れる音。



誰かがしゃがみ込む。



音楽も止まった。



さっきまで華やかだった空間が。



一瞬で。



恐怖に支配された。



「全員、落ち着いて!」



蓮の声が響いた。



代表として。



誰よりも冷静な声。



「愛莉!」


「はい!」


「湊!」


「了解!」


「客とキャスト、外へ!」


「分かった!」


「急いで!」



愛莉と湊が先頭に立つ。



「こっちです!」


「走らんといて!押さんといて!」


「大丈夫です、順番に!」


2人が客とキャストを誘導していく。



由夏も最後尾へ回った。



「こちらからお願いします」


「慌てず、壁際を__」


「大丈夫です。ゆっくりで構いません」



声は落ち着いている。



自分自身も怖い。



それでも。



仕事だから。



代表が残っているから。



自分が最後まで誘導しなければならない。



そう思っていた。



そして。



ふと。



蓮を見る。



「……」



蓮は動いていなかった。



店内に残っている人間がまだいる。



代表として。



最後まで残るつもりなのだ。



由夏には分かった。



__この人は、絶対に最後まで残る。



自分だけ先に逃げるなんて。



絶対にしない。



「……由夏ちゃん!」



愛莉の声。



「早く!」


「はい」


そう答えた。



けれど。



由夏は蓮から離れなかった。