加納欄の空白シリーズ35シーズン4

「さあな。手帳か何かじゃねぇのか?」

大山先輩は、腕を組んだまま答えた。

「手帳? あっ! あの『空き』ですかぁ?」

「まだ分からねぇよ。決めつけるな」

そのとき、会議室の扉がノックされた。

「失礼します」

小野寺さんに続いて、一人の女性が入ってきた。

「真中久子です。お話があると伺いましたが」

落ち着いた声の、四十歳前後の女性だった。

大山先輩が立ち上がり、警察手帳を見せる。

あたしも立ち上がり、警察手帳を見せて。

「お名前、あきこさんていうんですか?」

と聞いた。

一瞬訳がわかんなかったようだけど、直ぐに理解してくれたみたいで。

「あ、漢字ですか?よく初めての方には、ひさこと間違えられます。でもそれから会話が広がっていったりもしますけど」

と言った。

久子が、あきこか………。

「宮原俊介さんについて、お聞きしたいことがあります」

大山先輩が、仕切り直した。

「……宮原さんのことですか」

真中さんは一瞬だけ視線を落とした。

「先週、宮原さんと言い争いをされたそうですね?」

高遠先輩が静かに切り出した。

「ああ……あれは、仕事上のことです」

「どんな内容だったんですか?」

あたしが尋ねると、真中さんは唇を結んだ。

「……もう済んだことですから」

その返事に、大山先輩の眉がわずかに動いた。