あの桜の木の下でもう一度、出逢いたい

あれから、私とノートの主とのやり取りは毎日続いた。

翌日の昼休み。

私がドキドキしながら桜の木の下のノートを開くと、そこには相変わらずの勢いのある綺麗な文字が並んでいた。

『佐倉海月ちゃんね! みつきって呼びやすくていい名前じゃん!
俺は3年の由比ヶ佐波(ゆいが さわ)。佐波って呼んでよ!
てかさ、全然関係ないんだけど愚痴聞いてくれる?
今日古文の授業だったんだけど、桃井マジでウザくね!?』

「……ふふっ」

思わず、吹き出してしまった。

あまりにも唐突な、そしてあまりにもタイムリーな愚痴だったから。

『古文の桃井先生ですか? あー、すごくわかります(笑)
私も今日の2時間目が古文だったんですけど、あの人ほんと厳しいですよね。
ちょっと小テストの字が崩れてるだけで減点してくるし、課題の量も多すぎます!』

ペンを走らせながら、私の口元はずっとゆるみっぱなしだった。

桃井先生は、この学校に昔からいる有名なベテランの先生だ。

厳しくて頑固で生徒からは煙たがられているけれど、まさかあの『佐波先輩』も同じように苦しめられていたなんて。

ノートを通じて話すとあまり同じ学校にいるって感じがしないけどこういう話聞くと「あぁ、本当に同じ学校なんだな」って実感する。

それだけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。