あの桜の木の下でもう一度、出逢いたい

翌日の昼休み。

私は逃げるように教室を抜け出し、吸い寄せられるように旧校舎裏の桜の木へと向かっていた。

「……なに期待してるんだろ、私」

自分の浅はかさに、歩きながら苦笑いが漏れる。

あんな木の根元に置かれたノートに、たった一晩で返信が来るわけがない。イタズラだと決めつけて書いたのは自分なのに、胸の奥が少しだけそわそわしていた。

満開の桜の木の下に辿り着き、根元のくぼみを覗き込む。

昨日と同じように、小さな石が乗せられたキャンパスノートがそこにあった。

そっと石をどかし、ノートを開く。

私が昨日書いた3行のメッセージの下に――見覚えのない、軽やかで整った文字が書かれていた。

『ほんとに返事書いてくれるやついた! ラッキー!
お昼ひとりなの? 俺もなんだよねー。友達つくるの難しい? わかるよ、新学期ってなんか気まずいよな』

「え……っ!?」

思わず声が漏れた。

本当に……本当に返事が来てる!

ノートの文字を何度も指でなぞる。

なんだか気さくで、すごくノリが軽そうな文章。

文面から溢れ出す雰囲気は、クラスの中心にいるような、いわゆる『陽キャ』の男の子そのものだった。

学校で私みたいなぼっちと口をきいてくれるはずもない、眩しい世界の住人。

そんな人が、どうしてこの桜の木の下で交換日記なんて探していたんだろう。